Grinningtroll

Rafael Toral、1966年ポルトガル・リスボン出身。ギタリスト。今まで共演したアーティストには Jim O’Rourke、John Zorn、Sonic Youth、Phil NIblock 等々の名前がズラリ、もうかなりキャリアの持ち主。

この “Violence of Discovery and Calm of Acceptance” というタイトルの最新作は、彼の15年のキャリアの集大成的なアルバムだそう。

簡単に言うとギターによるサウンドスケープ、という種類の音楽。ギターとその周辺のエレクトロニクスによる音で、他の音の入らない文字通りのソロワーク。

私が普段、北欧の寒色系の音ばかり聴いているせいも多少はあるだろうが、しかしそれにしてもこのアルバムの音は暖色系だ。太陽の光の温かさのようなものをじんわり感じるサウンド。そのサウンドは広がり、色彩をゆらゆらと幻想的に変化させ、歪み、別の音へと変貌していく。

抽象的な音楽なので、その音にたっぷり浸るのもとてもいいし、また勝手な想像を巡らせるのも楽しい。イマジネイティブなサウンドなので、イメージはどんどん広がる。例えばこれをサウンドトラックにしたら似合いそうな画像はどんなだろう?私の、非常に個人的なイメージでは飛び立っていく小型飛行機。双翼機とかプロペラ機とか、ちょっとロマンのあるタイプが尚良い。ちょうど2曲目のぐわーんと音程が上がる音がこのイメージにぴったりだ(と私は思うのだが)。

ギターの音はほとんど原形を留めていない、というのか非常に音響的な音(?)なのだが、ただアンヴィエントだったりするだけでなく、結構芯がる音だ。ふわふわしたところはなく、結構意思の強そうな音。

このアルバムに収録されている10曲の中では、比較的ギターの音が聴こえる#10 がちょっと異色だが、アルバム全体をとおして統一感がある。しかし、それぞれの曲は数年に渡ってばらばらに録音されているそうで、ちょっと驚いた。

平和な音。所謂ヒーリング系ではないのだが、聴いていて心が癒される音楽。なんだか殺伐とした空気のなか、とても救われる気がする。